日本企業にとって、M&Aは重要な経営戦略のひとつとなってきた。これは、言うまでもないことだが、さらに重要なことはM&AのPost Merger Integration(PMI、すなわち買収や合併などのM&Aを行ったあとの両社の統合プロセス)であると堅く信じている。M&Aを完了するまでは多くの労力が必要だが、それはあくまでもスタートラインにつくための準備段階であり、完了後の時点が買い手企業と買われた企業の人と人との融合作業および信頼関係構築の第一歩となる。日本の企業はグローバルな成長を求めて外国企業へのM&Aを積極的に行っているが、買収によって相手企業を支配しようとするか、あるいは統合という手段によって必ずしも支配しないことによって、PMIの負荷が異なるように思われる。日本の電子部品業界や半導体製造装置業界でも多額のキャッシュを使って外国企業を買収しても、その後シナジーの発現もなく業績が低落するケースも多々見受けられ、M&A成功のためにはPMIも含めた初期戦略から検討しなければならないだろう。
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世界の生産能力が増加傾向か
製造業の世界生産能力は、需要量を上回りながら拡大し、供給過剰の状態が続いていくのではないかと危惧している。鉄鋼業の世界生産能力は20億トンと推定され、需要量の15億トンを上回っていると伝えられている。生産者は供給過剰による製品価格の下落により、常にコストダウンを迫られている。雨後の筍と言ったら言い過ぎだが、次々に高炉が新設されれば、買収による生産設備の統合も追いつかず、資本は疲弊する。今後、アフリカを含めた拡大指向の新興国の事業家が我もと設備を新設すれば、世界の生産能力はさらに高まり、需給ギャップは解消する余地が小さくなろう。そこに自由主義が加われば、さらにその傾向は強まろう。モノ作り復権の米国でも設備投資の高まりから生産能力が高まっている。製造技術がデジタル化等によって画一化の時代になり、市場がさらに開放すれば、ただ単なる生産能力ではなく、製造する能力の強い方が経済戦争に勝利することになる。コスト競争のなかで、ロボットを採用(雇用)するのか、人間を雇用するのか、難題である。
上場企業に対して事業売却を推奨
上場企業の事業部門の売却について、議論が高まっている。主力事業だと位置づけられてきた事業部門(あるいは主力事業でなくても)が、技術の汎用化や新規参入の増加等による競争環境の急激な変化から、あっという間に競争優位性を失い、企業全体の体力を奪っていくという実例が多く見られる。経営者や事業部門長は巻き返しを狙って、事業の合理化を図るというのが常套手段だが、それも新興国企業の台頭によって間に合わないケースが散見される。事業価値が悪化している場合、何らかの理由がそこには存在するが、その課題を克服できる補完関係が期待できる企業が存在する場合には、スピーディに事業売却を行うべきではないか。その補完関係のオリジネーションがM&Aには極めて重要になる。
M&Aは地球規模で
トムソン・ロイターが集計した2013年1〜6月の世界のM&A金額は、1兆ドルを下回り2年連続で前年同期を下回った。米国企業のM&A金額と全体に占めるその割合から逆算推定すると、9600億ドルにとどまったもようだ。地域別にみると、米国とアジア太平洋が前年同期を上回る一方で、欧州と日本は大幅に減少している。日本企業の場合、国内需要の伸び悩みから市場を海外に求め、外国企業の買収に積極的に乗り出したというのが記憶に新しいが、最近では超円高の是正もあり、その勢いが鈍っているのは明らか。日本企業にはまだまだ技術という強みがあるので、日本企業による買いだけではなく、望む外国企業に技術を高く売るという発想で、資本交流を活性化させてもいいのでは。
日本への直接投資低水準
日本への直接投資額残高のGDPに占める比率は2011年で3.9%と極めて低い水準にあることが国連貿易開発会議の調べで明らかになった。その要因として、法人税等を含むビジネスコストが高いことや投資を誘致するための活動努力が足りないといったことが指摘されている。この直接投資には、グリーンフィールド投資(法人の新規設立)のほかに、M&Aも含まれており、その内訳は現段階ではわからないが、M&A的に言うと、会社のオーナーや親会社の立場からして、外国企業に自らの会社(子会社を含む)を売却することについて、理屈では語れない拒否反応が根底に存在しているのではないかと感じている。その傾向は長きに渡って統計的にすでに現れている。人々や文化が国境を越えて行き来する時代がすでに到来しているなかで、経営者の「売り」の判断が遅きに失することのないよう、日本企業には是非とも新たな価値観も含めて柔軟に対応してもらいたい。
アベノミクスが求めているところ
安倍政権が誕生し、3本の矢によるアベノミクスがスタートしてから株価上昇が続いている。日銀の黒田新総裁も「2年以内の2%の物価上昇」を目標に、これまでとは全く違う次元の金融政策を打ち出し、強力にこれをサポートしている。デフレ脱却に向けた経済環境を整えているというのが政府の主張であろう。リフレ政策の賛否について議論が高まる中、本当に実体経済が新たな成長軌道に乗って行けるかどうかは日本企業の成長戦略の実行性と日本における個人消費の拡大にかかっていると言えよう。現段階では、ようやく「気」が高まり始めたという状況であり、これを実需につなげていくには、企業活動を活発にさせる産業政策と税制の改革、躍動感の有る企業活動、個人消費を拡大させる所得の拡大と将来不安をなくす新たな社会保障制度の確立が何と言っても欠かせない。企業と個人に活発な活動を求めているのがアベノミクスの意味するところだと考える。ただ一言付け加えるならば、財政再建も忘れてもらっては困るので、そのための議員定数の削減は一丁目一番地であると思う。
やはり日本企業は技術力を高める戦略を
超円高の修正が進み、日本企業を取り巻く一環境が好転の兆しをみせているが、これはあくまでも環境の問題であって、個々の日本企業の本質的な問題ではない。不確実要因は中国経済やグローバル化した企業活動のなかの中国企業の動きであり、その過剰生産能力の高さや大気汚染の問題が世界経済の動きを不確定なものにしている。日本企業は、量よりも質というこれまで長年培ってきた本意的なスタイルを技術力向上という旗印の元に追究していくべきではないか?
スピード経営
先日、日本ペイント株式会社が二プシー・インターナショナル・リミテッド(ウットラム・グループの100%子会社)から株式の公開買い付け(TOB)の提案を受けたとの報道があった。同社の有価証券報告書をみるかぎり、平成24年3月末の大株主名簿から二プシー社と同じグループ資本とみられる株主が登場したとみられることから約1年を経たところで、TOBの提案を受けたことになる。同社にとってウットラムグループはアジアでの合弁事業相手とのことで、TOB提案を受ける前にどのような協議があったのかは外部には知る由もないが、この件とは別に、技術力を持った日本企業に足りないものは、アジアを含めた海外企業にありがちなスピード・マーケティング力とも言われている。経営の速度に差があったことで、ウットラムグループが動いたとも考えられる。万が一の「まさか」に常に備えておく心構えが今も昔も必要だ。
既存技術の異分野への転換
軸受け大手の設備投資計画に変調の兆しが見え始めたという報道があった。これまで主力と考えられてきた自動車と中国という大きな括りでの変化の動きが明確になったことによるものだが、さらに、これらが一過性のものではないとの判断が各社にあるように思える。ラスベガスで開かれている家電見本市でも、家電にとどまらない異分野への事業展開を強調するプレゼンテーションが行われている。高い技術を持つ企業でも今後そうした傾向は一段と強まることが想定され、異分野への橋頭堡を確保することや、自社技術の活用のためのM&Aが増えてくると予想される。富士フィルムホールディングスが銀塩フイルムに使われていたナノ技術をメディカル、化粧品、マテリアルという異分野に横展開して成功を収めているという好事例を再認識したい。
日本の製造業復活に向けて
第2次安倍政権が誕生してから日本の産業の競争力を高める戦略構想が次々に明らかになってきている。超円高の修正局面が続き、日本の製造業を取り巻く環境は好転の兆しが出ている中で、制度面では官民共同出資会社による電機、産業機械を中心とした製造業の支援のための製造設備買取り法案や、民間企業による投資の活性化を狙った緊急経済対策における官民ファンドの創設などだ。これからもいろいろと具体策が出てこよう。為替環境、法制度の整備と来たら、次は企業自身の個別戦略のスピーディな実行によって変化していかなければならないだろう。グローバル競争は避けて通れないので、自らの強い分野と弱い分野を見極め、勝ち残りのためのアクションを起こしていただきたい。勝ち残りのために設備投資が有効なのか(自前で行くのか)、それともM&Aを通じて補完するのか(他社の資源を取り込むのか)の視点が欠かせないだろう。