同意なき買収

経済産業省が昨夏に出した企業買収における行動指針により、日本企業がタブー視されてきた同意なき買収に挑み始めた。具体的には、2023年9月のニデック(旧日本電産)による工作機械メーカーのTAKISAWAへのTOBを皮切りに最近では物流の丸和ホールディングスによる同じく物流大手C&Fホールディングスへの提案、第一生命ホールディングスによる福利厚生サービス提供のベネフィットワンへの提案、ブラザー工業のローランドDGへの提案等がある。

 この中で成功したのはニデック、第一生命の2社である。株式価値の最大化という上場企業が求められる本来の目的に対して、M&Aを通じたこのような取り組みにおいて、M&Aという手法は健全な姿に発展しつつあるが、憂慮すべき点もある。

 ブラザー工業は買収失敗後に以下のようにコメントを発表した。「M&Aで日本経済の活性化、社会の発展に貢献する思いがあった。M&A市場は健全な姿に発展しつつあるが、そうした歩みが後退してしまわない事を願う」ブラザーは従前の5035円というMBO価格を上回る1株5200円でTOB提案をしていたが、ローランド経営側が5370円での再提案をした事によりブラザーは撤退した。

ローランドの田部耕平社長らはテレビでブラザーに買収される懸念を繰り返し訴えていた。

経産省のM&Aガイドラインにおいては買収対象会社の経営陣はTOBの提案を真摯に検討する事が求められており、特に市場株価を上回る価格の提案の場合、それを否定するのであればその理由を合理的に定性・定量的にも株主に説明する事が被買収側の経営陣には求められている。

 より健全なM&A市場へと発展していくには、ローランドのケースのように感情論だけで片付けるのではなく、ガイドラインに沿った然るべき対応が増えていく事が求められる。