上場企業にとって、経営における戦略とリスクの明確化が重要になってきている。2018年の金融審議会の報告を踏まえて内閣府令が改正され、有価証券報告書への記載適用は2020年3月期と定められた。具体的には経営方針や戦略、リスク情報を詳しく記載し、さらに市場環境や経営の優先課題の認識なども文章で明記することになる。企業価値の向上を目指す一環であり、企業には戦略に基づいた本業への注力や効率化経営、更には事業再編なども期待したい。
しかし本質な問題もある。いくら有価証券報告書に立派な戦略・課題認識を記述しても、外部向けのリップサービスのようなものとなれば、それは本末転倒である。それぞれの企業には様々な事情はあったとしても、長い目で見た時に、コア事業とノンコア事業の選別や、ノンコア事業の必要性を分析議論することに時間を掛けていては、本来注力すべき事業に対しての投資が遅れたり、ライバルに遅れをとることによって企業価値の毀損にも繋がり兼ねない。日本の上場企業において経営判断のスピードアップは優先課題の1つであろう。
東京海上HDが2018年10月31日に1700億円で売却すると発表したトウキョウ・ミレニアム・リーという子会社は、2000年に設立した再保険販売の子会社で累計1330億円の純利益をあげ、親会社の連結業績にも貢献してきたが、近年の異常気象リスクの増大や収益性の観点で売却を決断した。永野毅社長は先代社長が築いた会社だけに悩んだが「時代の変化に適応するには勇気をもって事業を入れ替えないといけない」と話している。(2018年11月1日 日経新聞)(千)