事業売却という成長戦略

M&Aを活用した成長戦略と聞けば、通常は企業買収や事業買収といった「買い」をイメージされる方が多いかと思う。しかし、これからの時代は非中核事業や、利益が出ていても将来性のない事業については、売却という選択肢も成長戦略の一環として考える必要がある。戦後の高度経済成長の時代が終わり、アジアを含めた海外企業との大競争時代を迎えたからだ。

具体的な動きも見られる。三菱ケミカルHDの越智社長は2020年をめどに売上高で累計3000億円分の事業について撤退や売却を視野に入れて事業の再構築を検討し、黒字はもちろん、営業利益率などが目標値を超えていてもグループの成長に必要ないと判断すれば「再構築の対象となりうる」と話している(2017年11月29日 日経産業新聞)。事実、2010年から2016年までにM&Aで4000億円の事業を取り込む一方で、4500億円の事業を放出しているとのことだ。

 また、日立製作所は2017年1月13日に日立工機の全保有株式をアメリカ投資会社のKKRに売却すると発表した。インフラや情報通信などの社会イノベーション事業に経営資源を集中させる方針を掲げている中で、非中核となりうる事業を温存する理屈がないとの考えから実行に移した成長戦略型の事業売却の一例である。

海外では、フィリップスが稼ぎ頭だった半導体やテレビ事業から撤退、ヘルスケアなどに集中投資する戦略で業績が拡大基調に転じるなど具体的な成功事例が多い。

過去に多角化を進めた日本の上場企業は、強みを生かした成長戦略に基づく踏み込んだ事業の選択と集中を一刻も早く完了させることで、海外企業との競争に打ち勝っていかなくてはならず、その意味でもこうした動きが活発になることを期待したい。(千)