1980年代後半バブル期の日本企業による海外M&Aの高値づかみが頻発していたのは皆様覚えているだろうか。
当時は日本企業にノウハウも情報も乏しく、情報を持っていた仲介者も限られていた為に同じ仲介者が売却シナリオを描く事も多々あったとされる。
その代表例がソニーの米コロンビア映画(89年)とパナソニックの米MCA(90年)のM&Aだ。
ソニーは81%、パナソニックは54%のプレミアムを支払い上記両社を買収したが、パナソニックは5年後にカナダのSeagram社に株式の80%を売却し、ソニーも現在でこそソニーピクチャーズとして稼ぎ頭に成長したが、一時は赤字減損に苦しんだ時期もあった。
一方、2016年1月12日の日本経済新聞によると、最近3年の日本企業がM&Aで支払ったプレミアムは平均31%で、バブル期の42%から大きく減少した。ノウハウ、情報が積み上がってきている裏付けと言える。
しかし、M&A巧者で様々なノウハウ、情報がある大企業においても多額のプレミアムの支払いを厭わない企業がある。
過去に苦い経験のある日本企業がそこまでリスクを冒して大型M&Aを仕掛ける背景は何だろうか、その背景を探ってみた。
JT:JTは2015年に米たばこ大手レイノルズ・アメリカが手掛けるブランド「ナチュナル・アメリカン・スピリット」の米国外事業を約6000億円で買収。対象事業の2014年売上高は約176億円、税引き前純利益は21億円からすると、高値づかみを指摘する声もあるが、JTは、その理由をアメリカンスピリッツの圧倒的な成長性にあると説明している。
高品質の天然葉タバコのみを使用し、オーガニック栽培などにも取組む独自性が受け、2014年国内販売本数は約15億本と3年間で2.5倍になった。(この間国内総需要は1割低下)
またアメリカンスピリッツが高価格帯且つ若い世代に支持されている点もあり、JTの足りないピースを補う事ができる点が大胆なM&Aに繋がったと言われている。
このように必ずしも上場企業のM&Aにおける高値づかみが万人に理解されるとは限らないが、欧米やアジアで買収を続け世界一の空調メーカーとなったダイキン工業の井上礼之会長の「確固たる地位を持続するには自らが絶壁に立つ」との言葉にあるように、強い意識を持ち続けることが競争に勝ち残る企業とそうではない企業の重要な岐路となるのではないかと感じる。(千)