昨年6月から導入された上場会社に対するコーポレート・ガバナンス・コードの基本的な考えは、経営効率性、透明性を高め、企業価値を最大化する事が背景にある。具体的な事例としては、①東海カーボンが持合株式を中心に9銘柄を売却し、58億円の売却益を特別利益に計上、売却で得た資金は有利子負債の圧縮やM&Aによる成長投資に充てる方針と発表したこと、②大林組が東京証券取引所に提出したコーポレートガバナンス報告書の中で「保有意義が薄れた株式は売却する」と記載し、持合株式の解消を進める方針を明らかにしたこと、③アパレル大手のオンワードホールディングスが投資有価証券売却益22億円を特別利益に計上すると発表し、持合株式3銘柄を売却、保有資産を圧縮し、資本効率の向上につなげると発表したこと、などがあげられる。オンワードの吉沢正明専務は「コーポレートガバナンス・コードに基づいて、保有資産の見直しを進めている」と説明している。
このようにコーポレート・ガバナンス・コードを意識した取組みを行う企業がある一方で、必要性などについて理解はしているものの、事業への思い入れやそれが身売りと思い込み、実行に移せていない企業も未だに存在しているのも事実である。
しかしながら、コーポレート・ガバナンス・コード導入から半年が経ち、金融庁が11月24日に開いた企業統治に関する有識者会合において、投資家の意見をまとめているフィデリティ投信の三瓶裕喜氏が「企業同士が買収防衛の為に株を持ち合っている。企業にも持合株式を削減するという方針を表明してほしい」と発言、多くの委員が賛意を示したことも注目に値する。
日本の上場企業において、このような意識の変化が見られる中で、ただ単に持合株式の解消だけではなく、保有している子会社株式を含む資産が企業価値の形成にどれだけ貢献しているのかという観点で経営を推し進め、この方針や過程を株主に説明しなくてはならない時代になっていることに上場会社の経営陣は気がつくべきである。(千)